転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


235 街で売ってるものって、ちょっとの間で変わっちゃうんだね



 兵士さんたちの詰め所を出た僕たちは、まず馬車に載っけて来たいろんな物を売るために冒険者ギルドへ向かったんだ。

 でもね、冒険者ギルドは北門の近くにあるから結構時間がかかるんだよね。

 だから暇になったのか、ディック兄ちゃんが僕にこう聞いてきたんだ。

「なぁルディーン。さっき使った相手を寝かしちゃう魔法、何で狩りで使わないんだ?」

「あっ、俺もそう思った。あんなに簡単に眠らせられるなら、前に盛りに行った時ももっと簡単に狩りができるんじゃないか?」

 そしたらテオドル兄ちゃんまで一緒になって聞いてきたんだね。

 でもさ、あのスリープって狩りでは使えないんだよね。

「無理だよ。あのおじさんたちはとっても弱かったからみんな寝ちゃったけど、魔物はもっと強いもん」

 そりゃあ一角ウサギぐらいならスリープで寝ちゃうと思うよ。

 でも、そんな弱い魔物なたスリープをかけるよりマジックミサイルを撃った方がいいって僕、思うんだ。

 それに、お兄ちゃんたちと一緒に狩りに行った時なんかは、もっと使えない魔法になっちゃうんだよね。

「あの魔法って、相手が強ければ強いほど寝ないんだよ。それにさっきのおじさんたちに書けたのを見ればわかるでしょ? あれって狙った相手の周り全部を眠らしちゃうもん。もし魔物を引き付けようと思って前に出たお兄ちゃんたちが寝ちゃったのに魔物が寝なかったら大変じゃないか」

「うわっ、魔物の前で寝るって」

「それは怖いね」

 ドラゴン&マジック・オンラインの頃だったらパーティーを組んでる人には魔法は効かなかったんだよね。

 でもこの世界では範囲系の魔法をかけるとパーティーの人まで巻き込んじゃうから、みんなとっても使いづらい魔法になってるんだ。

「でしょ。だから狩りでは使えないんだよ。それにスリープで寝ちゃっても叩いたらすぐ起きちゃうもん。だから一回の攻撃でやっつけられなかったら使う意味ないけど、もしそれでやっつけられるくらい弱い魔物なら、みんなで叩いた方がいいって僕、思うんだ」

「確かにそうだなぁ」

 この後もちょっとの間、スリープをうまく使う方法がないかって話してたんだけど、結局さっきのおじさんたちみたいなのを寝かせるくらいしか使えないよねって事になっちゃった。


 僕たちがそんな話をしているうちに馬車は結構進んだらしくって、周りに露店が増えてきたんだよね。

 って事は冒険者ギルドまでもうすぐって事だ。

「さすがにこの時期になると葉物の野菜が増えてくるわね」

 でね、そんな屋台が並んでる道を進んでると、お母さんがこんなことを言い出したんだ。

 だから僕も屋台で売られてるものを見てみたんだけど、そしたら売ってるものが全体的に緑色になってるんだよね。

 前にお父さんと来たときはまだジャガイモとか玉ねぎみたいに茶色いものや春の果物がいっぱいだったのに、ちょっとの間で売ってるもんが全然違ってるんだもん。

 僕はそれを見て、びっくりしちゃったんだ。

「これはお店を見て回るのが楽しみだね」

「知らないお野菜とか、売ってるかなぁ?」

 レーア姉ちゃんやキャリーナ姉ちゃんも、通り過ぎていくお店を見ながらにこにこしてるし、僕もおいしいそうなものが売ってたら買ってもらおっと。

「おいおい。買い物が楽しみなのはわかるが、流石に今日は無理だぞ。村から運んできたものを売らないといけないし、そのあとの宿に移動したりする時間を考えると買い物は明日だ」

「えぇ〜」

 朝早くに村を出発したけど、途中で捕まえたおじさんたちを縛ったり、イーノックカウに着いたら兵士さんに色々聞かれたりしてかなり時間を取られちゃったんだ。

 それに村からはいろんな魔物の素材を積んできてるから、それを冒険者ギルドで買い取ってもらうにもかなりの時間がかかるんだよね。

 だからそれが終わってから買い物に行くのは、流石に無理なんだってさ。


 ちょっと不満そうなお姉ちゃんたちの目に耐えながら、お父さんは冒険者ギルドまで馬車を進める。

 でね、今回も買取だから入口を素通りして、裏側の馬車置き場の方へと移動したんだ。

「あら? 見ない馬車だからどこの誰かと思ったら、カールフェルトさんじゃないですか」

 そしたら冒険者ギルドの制服を着た金色の髪をした、人懐っこそうな顔の女の人がそう言いながら僕たちの馬車に近づいてきた。

 えっと、確かこの人は、お父さんがいつも買取をしてくれてるって言ってたニールリンドさんだよね?

「こんにちは、ニールリンドさん。今回も買取をお願いします」

「解りました。それでは馬車をこちらに廻してください」

 ニールリンドさんは、にっこり笑いながら馬車用の買取カウンターに誘導してくれた。

 でね、そこにお父さんが馬車を止めると、近くのギルド職員さんたちに荷物を降ろしてって頼んだんだ。

「あら? 今はお祭りの時期でしたっけ?」

「いえ、そんな事はないですけど。何故です?」

「いやだって、クラウンコッコの素材なんて、普段はほとんど持ってこないじゃないですか。それなのに、これほどの数の素材を持ってくるなんて」

 ニールリンドさんはクラウンコッコの嘴や尾羽、それに太い足の骨とかを見て不思議そうな顔をしたんだ

 そう言えばクラウンコッコは普通、お祭りの時くらいしか狩らないはずなのに、それがこんなにいっぱいあったら、そう思っても仕方ないよね。

「ああ、それはですね。普段はない事なんですが、多くのクラウンコッコが森の浅いところに巣を作って卵を産み始めたんですよ。でも、そこはまだ未熟な子供たちでも狩りのために足を踏み入れる場所だから、仕方なく狩ったんです」

「ああ、なるほど。そう言う理由だったんですね」

 不思議に思ってたニールリンドさんも、お父さんからクラウンコッコの素材が多い理由を聞いて納得したみたい。

 ただ、お父さんはこのクラウンコッコを僕じゃなく、村の大人の人たちが狩ったってわざと勘違いするような言い方をしたんだ。

 何でかって言うとブレードスワロー程度ならともかく、クラウンコッコまで僕が魔法でやっつけられるって事が解ったら大騒ぎになっちゃうかもしれないからなんだってさ。

 だからね、この間お尻が痛くならない馬車の作り方を教えに来てくれたお爺さん司祭様とお父さんたちがお話しして、こういう事にしようねって事になったんだ。


 今回はそれ以外にもいろんな素材をいっぱい持ってきたから、それを全部見てもらうには結構な時間がかかったんだ。

 だからその間、僕たちは他の人が冒険者ギルドに持ち込んできた物を見ながら時間をつぶしてたんだけど、

「グランリルからの馬車が来てるって、本当!? まだ帰ってないわよね」

 そしたら奥の方から、こんな女の人の声が聞こえてきたんだよね。

 だから、何があったんだろう? ってそっちの方を見たんだけど、そしたら見覚えのあるエルフのお姉さんがこっちに歩いてきてたんだよね。

「えっ、シーラさん? それにルディーン君も! って事は、グランリルから来たって言うのはカールフェルトさんたちだったのね」

 そう、そこにいたのは、いつもは冒険者ギルドの入口の方のカウンターにいるはずの、ルルモアさんだったんだ。


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